映画「生きる」の監督、寺田和弘さんより

2024年4月14日(土曜日)横須賀市文化会館大ホールでおこなわれた、ドキュメンタリー映画『「生きる」大川小学校津波裁判を闘った人たち』の監督、寺田 和弘さんより、メッセージエッセイをいただきました。

No.131 令和6年6月25日発行「16ミリ試写室だより」掲載

忘れられない日

記録・ドキュメンタリー映画監督 寺田 和弘

春という表現がそのままあてはまる青空のもと、横須賀中央駅から会場まで、緩やかな坂道を登るにつれ、不安が募っていきました。こんなに天気がいい日に、来てくれる方はどれぐらいいるのだろうと。そして横須賀市文化会館に到着して…目を疑いました。大勢の方が列をなして開場を待ってくださり、入口には大きな手作りの看板が!不安な思いは吹き飛んで、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

開場を待つお客様の列 横須賀文化会館前

「生きる」大川小学校津波裁判を闘った人たちは、東日本大震災関連の映画はヒットしないという業界の通説を打ち破り、映画館での観客動員数は2万人を超えました。しかし、それでもまだ「観る勇気がない」という声がたくさん聞こえてきます。観てくださった方がお友達を誘ってくれることで、少しずつ輪が広がるように観客数が増えていく、というのがこの作品の特徴で、一つの会場に大勢の方が集まるということは、これまでほとんどありませんでした。850人もの方に観ていただけるとは…忘れることができない日になりました。

遺族にとって2011年3月11日は忘れることのない、そして翌日からの地獄の日々も忘れることができない、ということは原告遺族の紫桃隆洋さんの話を会場で聴いていただいた方々には理解していただけたと思います。映画では描けていない光景を聞き、驚かれたかも知れません。しかし、それが現実でした。だからこそ、裁判を闘った遺族は「二度と同じ悲劇を繰り返してはならない」との思いで裁判後も活動しています。しかし、その一方で、裁判でその責任が認定された行政、教育委員会は、未だに「遺族の声」を聴こうとはしていません。

こうした中でも、遺族の方々は時間を見つけては廃校となった大川小学校で「語り部」を続けています。大川小学校は石巻の中心街からかなり離れています。公共交通機関もありません。ですが、もし機会があればぜひ大川小学校に来てください。みなさんとの再会を楽しみにしています!


寺田和弘監督のSNS
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小さな命のいいを考える会| 震災遺構大川小学校ガイド
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