2019年6月16日におこなわれた有料上映会、映画「やさしくなあに」の監督、伊勢真一氏よりメッセージをいただきました。
No.116 令和元年7月10日発行「16ミリ試写室だより」掲載
継続は力
監督 伊勢真一
映画『やさしくなあに〜奈緒ちゃんと家族の35年〜』は横浜市の泉区に暮らす姉の長女、てんかんと知的障害を合わせ持つ奈緒ちゃんと家族との日々を35年間に渡って記録したドキュメンタリーです。
「35年間もよく撮りましたね・・・」とよく言われるけど、気が付いたら35年経っていたということで、最初から長期撮影をしようと考えていたわけでは全くありません。
医者から長くは生きられない、と言われていた奈緒ちゃんの元気な姿を撮っておこうと思いたち、撮影を始めたのは8才の正月でした。二、三度撮影しに行って5分くらいのショートフィルムを創って家族四人だけに観てもらえれば・・・という気持ちでした。
「長く撮ればいいってもんじゃない」と口の悪い友達は言うけど、やっぱり長く撮ったからこそ見えて来たもの伝わるものもあります。今の時代は何事もスピーディーが好まれるけど、スローモーも悪くない。障がいを持ちながらも元気に生きることが充分に可能なこと、手助けが必要な奈緒ちゃんがいたことで家族や地域の「やさしさ」が引き出されたことなど、35年間の時間があったからこそ、しっかり見えて来たことです。
更なる新作は『えんとこの歌〜寝たきり歌人・遠藤滋〜』。脳性マヒで寝たきりになって34年になる、学生時代の友人遠藤滋と介助の若者達との日々を24年間に渡って記録したドキュメンタリー、これ又長期撮影の作品です。ベッドで寝たきりの遠藤の思いの丈を、自作の短歌でつづる構成・・・斗病の苦しさ、恋の悩み、そして神奈川・相模原での障がい者大量殺傷事件への怒りがじっくりと描かれます。
継続は力。横須賀の16ミリ試写室主催『やさしくなあに』上映会場で500人を超えるお客さんの姿を前にして、自作の映画創りのことを思い返していました。
私もドキュメンタリーを撮り続けるから、みなさんも横須賀の地でドキュメンタリーを観る集いを続けてください。
ありがとう。
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