恵徳苑の理事長、五十嵐直子さんより

横須賀、日の出町にある特別養護老人ホーム 恵徳苑の理事長、五十嵐直子さんからメッセージをいただきました。

No.133 令和7年1月25日発行「16ミリ試写室だより」掲載

老人ホームの映画会

社会福祉法人恵徳会 理事長 五十嵐 直子

特別養護老人ホーム恵徳苑に介護職員として働き始めた21歳の私は、入居者や先輩職員、地域の方々との出会いから様々なことを学びました。当時は介護保険制度が始まる10年ほど前の時代でしたので、入居者の身体状況や介護内容、高齢者理解を含めた恵徳苑を取り巻く状況は現在とはだいぶ違っていて、今より比較的自立度が高めの方々が入居されていたこともあり、時には車でお芋堀に出かけたり、温泉に一泊旅行をしたこともありました。しかし、日常的には施設の中で、顔なじみの入居者、職員との閉ざされたコミュニティでの生活は単調になりがちで、地域のボランティア活動をされている方々の訪問は入居者の楽しみのひとつとなっていました。日本舞踊、歌謡ショウ、マジックなど多種多様な訪問に癒されていました。中でも楽しみにしていた訪問は16ミリ試写室の映画会でした。いつもは食事をするその場所は、暗幕を締め映写機が設置されるとあっという間に映画館となり、映像を真剣に見入って笑ったり、涙したり、隣の人と小声でささやいたりしながらひと時を楽しみ、見終わった後もしばし映画の話題で盛り上がったものでした。
あれから30年以上が過ぎ、恵徳苑は逸見から横須賀中央へ移転し、全室個室に様変わり広い交流スペースでボランティアさんの訪問を楽しむことができます。45周年を迎えた恵徳苑の介護現場でもデジタル化の波が押し寄せています。しかし開苑当初から変わらぬスタイルでときに映写機のご機嫌が悪くなるハプニングもありながら、16ミリフィルムが回る音を心地よく聞きながら臨場感のある映画を楽しむことができる入居者は、とても幸せで最高の贅沢をしているのではないかと思います。
これからも入居者の癒しのひと時を提供してくださることを大いに期待しています。

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